バレエの世界 -知るとさらに楽しく、面白い-
『カンパニー -努力(レッスン)、情熱(パッション)、そして仲間たち(カンパニー)-』では、とあるバレエ団が登場し、主人公の青年サラリーマンが、それまで縁遠かったバレエの世界に、時とともにどんどん魅せられていきます・・・。
宝塚歌劇の舞台ではなじみ深い“バレエの世界”。観劇前に、あらためてのぞいてみませんか。
発祥はイタリア。フランスで花開き、基礎が確立される。
バレエは、14世紀~16世紀のルネサンス期にイタリアで生まれました。当時は現在のバレエとは違って、貴族の宴会の余興や社交ダンスのようなものだったとされています。そして、16世紀にフランスへと伝わり、初めてのバレエ作品が上演されました。
2017年に月組で上演した『All for One』で、愛希れいかが演じたルイ14世は、バレエに熱心なキャラクターとして登場しました。実際のルイ14世もバレエがとても好きで、大作「夜のバレエ」では自らが太陽神アポロンを演じました。1661年には「王立舞踊アカデミー」を設立。そのアカデミーが発展したのが、世界最古の国立バレエ団「パリ・オペラ座バレエ団」です。
フランスからロシアへ。そして世界へ広がる。
18世紀に入ると西欧からロシアへとバレエが伝わり、独自の発展を遂げていきます。チャイコフスキー作曲の三大バレエ「白鳥の湖」「眠れる森の美女」「くるみ割り人形」が誕生した19世紀後半、古典や形式美を追求する“クラシック・バレエ”の基礎が築かれ、回転やジャンプなどの高度なテクニックを取り入れた作品が多く上演されました。
20世紀初頭には、2011年雪組公演『ニジンスキー—奇跡の舞神—』でも取り上げられたヴァーツラフ・ニジンスキーの所属したバレエ団「バレエ・リュス」が設立され、革新的な作品で人気を博しました。「バレエ・リュス」解散後も、ダンサー・振付家たちは世界で活躍し、20世紀のバレエの発展に貢献したのです。こうしてバレエは世界各国に広まっていきました。
<白鳥の湖>
「白鳥の湖」は、1877年に、モスクワ・ボリショイ劇場バレエ団によって初演されました。現在では人気演目とされていますが、初演の際はあまり評価されず、チャイコフスキーの死後、新しい振付で再演されたものが、今の「白鳥の湖」のもとになっています。
この演目は、オデット(白鳥)とオディール(黒鳥)という、正反対の二役を一人で演じることが特徴で、王子との“真実の愛”をめぐり物語が進んでいきます。しかし、「白鳥の湖」はバレエ団や演出家によって、音楽や振付、内容さえも様々なアレンジを加えて上演されることが多く、そうした作品には“○○版”といった呼称がタイトルに添えられます。解釈やあらすじも大幅に変わるため、結末ももちろん違い、極端に言うと、不幸になる結末と幸せになる結末のどちらも存在します。今回の劇中に登場する「新解釈版・白鳥の湖」がどのような「白鳥の湖」になるのかも、ぜひお楽しみに。
日本のバレエ文化。
日本のバレエの歴史は、1912年、イタリア人指導者が帝国劇場歌劇部のバレエマスターに起用されたのが始まりとされています。
現在、日本には国立のバレエ学校はありません。しかし、他国と比べてもあちこちに小さなバレエ教室が点在し、美しい所作や礼儀を身につけるために、また、健康的なお稽古事として小さな子どもから大人まで、幅広い層で人気を集めています。
バレエダンサーへの道を考えた場合、多くは民間のバレエスタジオやバレエスクールなどで本格的なレッスンを受けて、技術を向上させることになります。バレエを専門的に学べる大学や専門学校もありますが、卒業してもダンサーの資格や職が保証されるわけではありません。バレエ団のオーディションで合格し、所属することで、晴れてプロのバレエダンサーになるのです。
日本ではさまざまな事情から、諸外国のように副業を持たないプロバレエダンサーはごく少数と言われています。彼らの多くは、舞台出演のかたわら、バレエスクールの講師やあるいはバレエとは無関係のアルバイトをしなければ、活動を続けられないのです。
しかし、最近では、若くして海外のコンクールなどで優秀な成績を収め、世界のバレエ団やバレエ学校に留学する日本人ダンサーも増えています。これまで以上に、プロとして世界で活躍する日本人ダンサーの姿を見られるようになることでしょう。
『カンパニー -努力(レッスン)、情熱(パッション)、そして仲間たち(カンパニー)-』にも、そのような過酷な状況の下で活動するバレエダンサーが登場します。バレエの世界とは無縁であるがゆえに、全く想像もしていなかった現実を目の当たりにし、大きな衝撃を受ける主人公・青柳誠二が、問題を抱えながらも明るく、力強く前を向いているダンサーたちと信頼関係を築き、困難に立ち向かいます。
個性豊かなキャラクターたちが懸命に生きる姿を描いたハートフルな物語をぜひ劇場でお楽しみください!
奥深い“バレエの世界”を知るための第一歩として、原作に登場した言葉を中心にピックアップした“バレエ用語”を簡単に解説します。バレエに馴染みがない方も一度は耳にしたことがあるかも。バレエ用語は、そのひろがりとともに、イタリア語、フランス語、英語など、さまざまな言語が使われていますが、なかでも代表的なものをご紹介します。
バレエ用語(五十音順)
クラシック・バレエ
19世紀末までに確立されたバレエ技法に忠実な踊りのこと。技法がどんどん高度になり、現代では踊りの様式も多様になった。
コール・ド・バレエ(コール・ド)
群舞を踊るダンサーの総称、または、群舞そのものを指す。日本では“コール・ド”と短縮して使われることが多い。
ソリスト
一人、または数人で踊るパートを任される、主役クラスに次ぐ地位のダンサー。ソリストでもファースト・ソリスト、セカンド・ソリストといった序列を設定しているバレエ団もある。
チュチュ
女性バレエダンサーの代表的な衣装のひとつ。スカート丈がひざ下かくるぶしまであるロマンティック・チュチュと、短く硬めのチュールなどの薄手素材を重ね合わせたクラシック・チュチュがある。
ロマンティック・チュチュは19世紀前半にフランスでひろまった。代表的な演目は「ジゼル」。
一方、19世紀末にロシアで生まれたクラシック・チュチュを使った代表的な演目は「白鳥の湖」。
トゥ・シューズ
先端部に詰め物をして、硬く平らにしたバレリーナ用の靴。18世紀に登場し、多くの回転を要する技が可能になった。ポアントとも呼ばれる。
パ・ド・ドゥ
パ(pas)とはフランス語で“歩”という意味で、バレエや舞踊でのステップを表わす。ドゥ(deux)は数字の“2”の意味で、パ・ド・ドゥは男女二人のダンサーによる踊りのこと。3人の踊りはパ・ド・トロワ、4人の踊りはパ・ド・カトルとなる。
プリマ・バレリーナ(プリマ)
主役を踊る女性バレエダンサー。女性のバレエダンサーである“バレリーナ”に、イタリア語で“第一の”という意味の“prima(プリマ)”を付けた敬称。“プリマ”と略されることもある。
プリンシパル
英語圏のバレエ団で主役クラスのダンサーを指す言葉だったが、現在は世界的にその意味で使われている。パリ・オペラ座バレエ団では、“星”を意味する“エトワール”と呼ばれている。
<参考文献>
クラシック・バレエ入門 大人のためのダンスレッスン Kバレエ:監修/マイナビ出版
魅惑のバレエの世界 -入門編- 渡辺真弓:著/青林堂
バレエの世界へようこそ! あこがれのバレエガイド リサ・マイルズ:著 英国ロイヤルバレエ:監修 斎藤静代:訳/河出書房新社
バレエ用語集 小山久美:監修/新書館
日本のバレエ 三人のパヴロワ 渡辺真弓:著/新国立劇場運営財団情報センター
公益社団法人日本バレエ協会ホームページ