『柳生忍法帖』の世界
山田風太郎氏の傑作小説「柳生忍法帖」
礼真琴率いる星組が初の舞台化に挑む「柳生忍法帖」は、時代を席巻した人気作家・山田風太郎氏が生んだ傑作時代小説です。人々を惹き付けてやまない、その作品世界の魅力に迫ります。
「柳生忍法帖」の世界
空前の大ヒット!忍法帖シリーズ
1958年連載開始の「甲賀忍法帖」から始まった、山田風太郎氏の忍法帖シリーズ。戦国時代や江戸時代を舞台に、超人的な能力を持つ忍者や剣士たちが、あっと驚く忍法や秘術を繰り出しての、手に汗握る戦いが描かれています。
「柳生忍法帖」も名を連ねる忍法帖シリーズは爆発的ヒットを博し、次々に映像化されるなど、1960年代の日本に一大忍法ブームを巻き起こしました。
今やエンターテインメント活劇やゲームでもおなじみの“チームバトルもの”の源流と言われることも多く、息もつかせぬアクションに彩られた独創性ある物語の数々は、現在も多くの読者を魅了し続けています。
英雄・柳生十兵衛、第一の物語「柳生忍法帖」
「魔界転生」「柳生十兵衛死す」とともに“十兵衛三部作”と称される「柳生忍法帖」。山田風太郎作品最大の英雄・柳生十兵衛の物語は、ここから始まりました。
時は江戸初期の1639年。会津藩主・加藤明成の暴政を見限った家老・堀主水は、一族300余人を率いて出奔したことにより、反逆罪に問われ、処刑されます。会津騒動と呼ばれるこの史実に、大胆な発想を織り交ぜ、堀一族の女たちの復讐を剣豪・柳生十兵衛が助太刀するという、斬新な物語に仕立て上げました。
実在の柳生十兵衛は、将軍家剣術指南役・柳生宗矩の嫡子として、次期将軍・家光に仕えましたが、20代の頃に10年余り、公の場から姿を消しています。この空白期間が、クリエイターたちの想像力を掻き立て、十兵衛は様々な作品で描かれてきました。
そのなかでも山田風太郎氏は、いかなる窮地にも動じぬほどスケールが大きく、天才剣豪ながら人間臭い魅力に溢れた十兵衛を、たたみかけるような筆致で描き出し、読者の心を掴んでいます。
星組公演『柳生忍法帖』では、この奔放無頼なヒーロー・柳生十兵衛と、妖気に満ちた強敵・芦名銅伯、その娘で魔性の女・ゆらなど、個性豊かなキャラクターたちによる痛快無比の山田風太郎の世界を舞台上で繰り広げます。
稀代の娯楽作家・山田風太郎
忍法帖シリーズにより一躍人気作家となった山田風太郎氏は、早くからその非凡な才能の片鱗を見せ、忍法帖シリーズのほかにも、推理小説や“明治もの”小説シリーズなど、時代にあわせた作風で独自の文学世界を築き上げました。
“十兵衛三部作”の第二弾「魔界転生」から25年後の1991年、「柳生十兵衛死す」を発表。シリーズ完結作が、2001年に亡くなった風太郎氏の遺作となりました。
今でも再刊を重ね、映像や漫画など様々に形を変えながら、時代を超えて愛され続ける山田風太郎作品。その功績への敬意を礎に、有望な作家作品を発掘するために、氏の名前を冠した「山田風太郎賞」も創設され、毎年注目を集めています。
礼真琴演じる隻眼の天才剣士・柳生十兵衛が、強大な敵に挑む宝塚剣豪秘録『柳生忍法帖』。星組がお届けする、山田風太郎氏の心沸き立つ世界に、どうぞご期待ください。
山田風太郎記念館(兵庫県養父市関宮)
山田風太郎氏の郷里、兵庫県養父市にある山田風太郎記念館では、書斎の一隅を再現したコーナーや写真、直筆原稿、初版本、愛用品の数々など、作家の原点に触れることができる資料を展示しています。
宝塚版『柳生十兵衛』主な登場人物
柳生十兵衛(礼 真琴)
隻眼の天才剣士。将軍家剣術指南役である柳生宗矩の嫡男だが、跡継ぎとしての務めを嫌い、剣術修行に明け暮れる、奔放無頼の男。
将軍・徳川家光の姉である千姫から、敵討ちを誓う堀一族の女たちの指南役を託される。超人的な強者揃いの七本槍衆が相手の、到底不可能と思われる難題にも「面白い」と言ってのけるほどの豪胆さを持つ。ひとたび修行が始まれば、手心を加えることのない厳しい指導者だが、その一方で、多くの女性を虜にする優しさも垣間見せる。
命を懸けた戦いにも泰然とした様子で挑み、どんな時もユーモアを忘れない。
ゆら(舞空 瞳)
暴政を敷く会津藩主・加藤明成の側室で、妖艶な美しさを持つ娘。父である芦名銅伯に従い、江戸や城下で女を攫う明成の悪業を助けている。銅伯にとっては娘というだけでなく、芦名一族の行く末を左右する、鍵となる存在。
鶴ヶ城に現れた十兵衛に、敵対する関係でありながら、激しく心を奪われていく。
芦名銅伯(愛月 ひかる)
加藤明成の家臣で、会津藩を牛耳る謎の人物。かつて会津を治めていた芦名氏の生き残りであり、芦名一族の長。
妖異壮絶の武術を持つ七本槍の育ての師で、驚天動地の地獄の幻法を操り、凄惨なほど妖しい気を発している。不死身のごとき体を持つ。