『モアー・ダンディズム!』の魅力
~“ダンディズム”シリーズを振り返る~

宝塚歌劇を代表する演出家の一人、岡田敬二の情熱により生み出されたロマンチック・レビュー作品の中でも、宝塚歌劇の永遠のテーマである“男役の美学”を追求する“ダンディズム”シリーズ。
第三弾となる星組公演『モアー・ダンディズム!』上演にあたり、過去のシリーズ作品の魅力を、心奪われる場面とともにご紹介します。   

1995年花組公演『ダンディズム!』

写真 左:第5章 ハードボイルド/右:第1章 オープニング

  

宝塚大劇場・東京宝塚劇場公演

主な出演者:真矢みき、純名里沙、海峡ひろき、愛華みれ、紫吹淳、匠ひびき

“男役の美学”に通じる「勇気」「献身」「香り」など男性の様々な魅力をテーマにした大人のレビューで、トップスター・真矢みきをはじめとする花組の個性が存分に発揮された作品。大階段に四色のダンディーたちとレディーたちが並ぶ色彩豊かなオープニングをはじめとした華やかな場面の数々で、愛の美しさを謳いました。   

第5章 ハードボイルド

哀愁の中にも、粋でゴージャスな大人の格好良さが際立った、『ダンディズム!』を代表する名シーン。真矢が、場面を鮮烈に印象づける曲「PARADISO」で、愛ゆえに別れを選んだ男の切ない胸の内を色気たっぷりに歌うと、ダンスの精鋭たちが加わり、シャープな踊りで魅了します。シンプルな舞台で魅せるパフォーマンス、帽子やスーツの着こなし、視線やしぐさなど、細部にまで宿る“男役の美学”に注目の場面です。   

<岡田敬二が語る>
真矢みきさんは、非常に芝居心や男役の色気のあるスターで、踊りの中での視線の使い方や、一つひとつのしぐさに、驚くほど細かい工夫を見せていました。衣装の早替わりの連続でも、場面ごとに髪型まで変えるこだわりには感動しましたね。「ハードボイルド」は、男役の“濃密な色香”と“こだわり”が詰め込まれた、彼女の真骨頂のような場面です。

2006年星組公演『ネオ・ダンディズム!』-男の美学-

写真 左:第1章 オープニング/右:第4章 キャリオカ

  

宝塚大劇場・東京宝塚劇場公演

主な出演者:湖月わたる、白羽ゆり、安蘭けい、立樹遥、涼紫央、琴まりえ、柚希礼音、陽月華

1995年花組で上演された『ダンディズム!』の精神を受け継ぎつつ、当該公演で退団となったトップスター・湖月わたるの集大成とも言える“男役の美学”を追求し、様々な趣向で魅せた作品。純白のチャイナスタイルにソフト帽を被った“ドラゴン”の湖月が、『ダンディズム!』で印象深い「PARADISO」を歌うオマージュから、『ネオ・ダンディズム!』のオリジナルのオープニングで魅せました。激しいダンスシーン、感動的なコーラスなど、湖月らしい『ネオ・ダンディズム!』をつくり上げました。   

第4章 キャリオカ

湖月の歌声で始まる「キャリオカ」は、『ダンディズム!』で熱い支持を得た中詰めシーンのリメイク。黒燕尾の男役たちによる情熱的な群舞から、ドレス捌きも見どころの娘役たちの優美な舞へ流れるように展開、やがてカップルたちが歌い踊る、このシーンのクライマックスへと続きます。宝塚歌劇のレビューの醍醐味が詰まった華やかでエレガントな場面です。   

<岡田敬二が語る>
チャイナスタイルのガウンにソフト帽を合わせる独特な衣装は、デザイナーの任田幾英先生と一緒につくり出しました。見るからに男役の魅力に溢れる湖月わたるさんが見事に着こなしてくれましたね。彼女が中心となることで、「アディオス・パンパミーア」「キャリオカ」など素晴らしい場面ができました。

2007年星組公演『ネオ・ダンディズム!II』-男の美学-

写真 第5章 明日へのエナジー

  

博多座公演

主な出演者:安蘭けい、遠野あすか

『ネオ・ダンディズム!』の色合いはそのままに、トップスター・安蘭けいを中心とした新生星組のためにリメイクされた、ロマンチックでエキサイティングなレビュー。同じくロマンチック・レビュー・シリーズの『シトラスの風』(1998年宙組)より、名場面「明日へのエナジー」が新たに追加され、好評を博しました。   

第5章 明日へのエナジー

ゴスペルの歌手たちが、明日を夢見る若者たちのエネルギーを全身で表現する、迫力に満ちたこの場面は、2000年のドイツ・ベルリン公演などでも再演を重ねてきました。安蘭の力強く伸びやかな歌声、星組生のエネルギッシュなコーラスやダンスが胸に迫る、感動的な場面です。   

<岡田敬二が語る>
「明日へのエナジー」を、大劇場トップお披露目公演を終えたばかりの安蘭けいさんを中心に再現しました。彼女は不断の努力を重ねて、一歩一歩進んできた人でしたから、その経験から生まれる魅力が集結したように思います。振付の謝珠栄先生の、創作への意欲とエネルギーに満ち溢れた場面で、これまで再演したいずれの組も、力強いパフォーマンスを見せてくれましたね。

2008年星組公演『ネオ・ダンディズム!III』-男の美学-

写真 第2章 ネオ・ダンディズム

  

全国ツアー公演

主な出演者:安蘭けい、遠野あすか

博多座での『ネオ・ダンディズム!II』が好評を博した後、全国ツアーでも、“男役の美学”を主軸に、宝塚らしい香りとポエムに溢れた作品『ネオ・ダンディズム!III』を上演。『ネオ・ダンディズム!』で安蘭が歌った「All by myself」をソロで歌う場面など、バージョンアップした演出も話題となりました。
  

第2章 ネオ・ダンディズム

「ダンディズムとは何か」を伝える導入から、カサノヴァ風の青年に扮した“ネオ・ダンディ”の安蘭がバラの乙女たちに囲まれ登場し、「ネオ・ダンディズム」に乗せて、男役の秘めた情熱をしっとりと歌い上げます。歌を通して語られる“男役の美学”も含めて堪能させる場面となりました。   

<岡田敬二が語る>
心を込めて歌詞を伝え、物語をきちんとお客様の心にお届けできるようにといつも出演者の皆に求めてきましたが、歌の技術力を持つだけではなく、それができる安蘭さんのために、私自身も「All by myself」の作詞にはとても熱心に取り組みましたし、やり甲斐のある作業でした。トップスターとなった安蘭さんが、思い入れのある「All by myself」をソロで歌ってくれたことで、彼女ならではの“ダンディズム”を印象づけるシーンになったのではないでしょうか。

2008年の星組公演『ネオ・ダンディズム!III』以来、13年ぶりとなる“ダンディズム”シリーズ、『モアー・ダンディズム!』。
華やかさと香り、そして色彩感溢れるロマンチック・レビューの世界を継承したこの作品を、モダンでエネルギッシュ、加えてシャープな魅力も兼ね備えたトップスター・礼真琴を中心とした星組生が、現代の“ダンディズム”としてどのように表現してくれるのか、期待が高まります。
歌、踊り、音楽、衣装、セット、照明など、すべての要素が統合されてこそ成り立つ、繊細なレビューの世界を、ぜひご堪能ください。