制作発表会レポート
4月17日(水)、宝塚歌劇雪組公演 かんぽ生命 ドリームシアター 幕末ロマン『壬生義士伝』、かんぽ生命 ドリームシアター ダイナミック・ショー『Music Revolution!』の制作発表会が行われました。
制作発表会には、公演にご協賛いただく、株式会社かんぽ生命 取締役兼代表執行役社長・植平光彦様、宝塚歌劇団理事長・小川友次、宝塚歌劇団演出家の石田昌也と中村一徳、雪組トップスター・望海風斗、雪組トップ娘役・真彩希帆、彩風咲奈に加え、「壬生義士伝」原作者の浅田次郎氏にもご登壇いただきました。
人気時代小説の舞台化、そして革命的なショーの二本立て!
ドラマ化、映画化ともに大ヒットを記録した浅田次郎氏のベストセラー小説をもとに舞台化した『壬生義士伝』。幕末の混乱を背景に、武士としての義、家族への愛、そして友への友情という人間ドラマが凝縮された作品に、望海風斗率いる雪組が挑みます。
『Music Revolution!』は、「音楽」の起源から今日に至るまでの発展をテーマに、「音楽」の持つ美しさと素晴らしさをダイナミックにお届けするショーです。雪組が一丸となって奏でるハーモニーに、どうぞご期待ください。
南部藩士の誇りを歌い上げるパフォーマンスに万雷の拍手
制作発表会は、『壬生義士伝』のパフォーマンスから始まりました。
壇上に現れる、二本差し姿の望海風斗と彩風咲奈。主人公・吉村貫一郎が親友の大野次郎右衛門に脱藩の意志を伝える場面が披露されると、一人残った大野次郎右衛門役の彩風が、「南部讃歌」の曲にのせて、固い決意とともに故郷を去ろうとする友への想いを切々と歌います。
場面が一転すると、望海が、妻しづに扮した真彩希帆を伴い、原作では物語の核となる2人の別れの場面を再現します。南部藩士の心意気を表現した楽曲「石を割って咲く桜」を、妻への愛、武士としての誇り、そして故郷・南部藩への想いを込めて歌い上げました。望海の重厚感のある歌声に、真彩の美声が重なり、作品の世界観に惹き込まれた会場からは、熱い拍手が送られました。
豊かな表現力と歌唱力を備えた望海風斗を筆頭に、出演者一同、真心を込めてお送りする、宝塚歌劇版『壬生義士伝』。そして、雪組がセンセーションを巻き起こす華麗なショー『Music Revolution!』。豪華二本立てに、どうぞご期待ください!
- 制作発表会 ムービー
『壬生義士伝』原作者の浅田次郎氏は、数多くのベストセラー作品と、いくつもの受賞歴を有する、現代日本を代表する小説家です。そのジャンルは幅広く、心温まるストーリーに涙し、時には登場人物の生き様に深く共感し心震えた読者も多いことでしょう。宝塚歌劇の原作となるのは、2017年宙組公演『王妃の館 -Château de la Reine-』以来2作目。今回の雪組公演に向けて、ご自身の想いを語ってくださいました。
「壬生義士伝」は日本人の魂を込めた小説です
浅田 次郎氏【『壬生義士伝』原作者】
「壬生義士伝」は、今から約20年前に週刊誌の連載小説として書いた作品です。書き始めた当初はこのように長い話にする予定はなかったのですが、読者からのご要望もあり、また私自身の思いもありまして、結果、原稿用紙1200枚にも及ぶ長い話になりました。そんな小説を舞台化されるにあたって、脚本・演出の石田先生はさぞお困りでしょう(笑)。相当な高等技術を要することだと思いますが、時間制限があるなかで、一体どこをどう削り、脚色して作品にされるのか、非常に興味のあるところです。私といたしましては、小説を書く段階で映像化、舞台化までは考えておりませんので(笑)、ご迷惑をおかけすることになりますが、一方ではいち観客として上演を大変楽しみにしております。
宝塚歌劇さんとは『王妃の館 ‐Château de la Reine-』に続き2度目のご縁となりますが、実はその「王妃の館」と「壬生義士伝」は同時期に並行して執筆しておりました。「壬生義士伝」の原稿を、「王妃の館」の執筆のためにその舞台となったパリのパヴィヨン・ド・ラ・レーヌに宿泊しながら書いた覚えがあります。同時期に書いた全く形の違う小説を、20年もの時を経て宝塚歌劇で上演していただくというのは、奇しき巡り合わせですね。
私はこの小説に、日本人の魂を込めて書きました。たくさんの読者の方に読んでいただいた作品ですが、これを機に、世代を超えた、より多くの方々にもう一度読んでいただいて、何かを感じていただければ嬉しく思います。
パフォーマンスの後、望海風斗、真彩希帆、彩風咲奈が意気込みを語りました。
雪組トップスター 望海 風斗【吉村貫一郎】
大変多くのファンがいらっしゃる小説「壬生義士伝」を原作としたこの作品に挑戦させていただけることを、とても嬉しく思っております。昨年春の全国ツアー公演で、同じく石田先生の作品である『誠の群像』という、『壬生義士伝』と同じ新選組を題材にした作品に出演させていただきましたが、今回はまた違った角度から見る新選組の姿や、武士として、人としての生き様、命の大切さなどを表現し、お客様にお届けしたいと思います。今回は南部弁という慣れない方言での台詞ですので、お芝居を深めると同時に、南部弁を自然に使い、きちんと皆様にお伝えすることも心掛けてお稽古いたします。
ショー『Music Revolution!』は、今の雪組を知り尽くしてくださっている中村先生の作品ですので、安心して先生にお任せし、雪組の勢いをお客様に感じていただけるよう、出演者一丸となって頑張ります。どうぞよろしくお願いいたします。
吉村貫一郎という人物について
吉村貫一郎という人は、宝塚歌劇の主人公によく見られるような民衆を率いるリーダーでもなく、彼の思想に共感して人々が集まってくるわけでもありません。しかし、土方歳三でも沖田総司でもなく、あえて吉村貫一郎を中心に描くことで、混乱した時代の中でも、人として大切なものを見失わずに生きた男がいたということが表現できるのだと、浅田先生の小説を読んで感じました。そんな作品を今の雪組で上演できることが楽しみでもありますし、同時にとても大きな挑戦だとも思います。
新選組が揃う場面では、近藤勇や土方歳三がセンターにいて、私の演じる吉村は端の方にいるので、お客様は私の姿を探されるかもしれません(笑)。でも逆に、そのような人物が後世に残したものはとても大きかったのではないかと思います。舞台のどこにいても、人としての在り方を表現し、一つの作品としてしっかりまとまるよう、全員で創り上げていきたいと思います。
雪組トップ娘役 真彩 希帆【しづ/みよ】
お芝居では“しづ”と“みよ”の二役に挑戦させていただきます。しづは望海さんが演じられる吉村貫一郎の妻ですので、子を持つ母としての強さや夫を待つ妻としての強さなど、役の心を、ご覧になるお客様にしっかりお伝えしたいと思います。お稽古場で南部弁の指導をしてくださる先生の口調が普段からとても優しく感じられるので、南部弁の持つ柔らかさが皆様にも伝われば嬉しいです。ショーは、いつも新たな気持ちで取り組むことができ、ワクワクさせてくださる中村先生の作品ですので、とても楽しみです。お客様に、ショーのタイトルにもあるとおり“革命”をお届けできますよう、みんなで精一杯お稽古を重ねてまいりたいと思っております。
雪組 彩風 咲奈【大野次郎右衛門】
以前、『るろうに剣心』で斎藤一を演じた時、浅田次郎先生の「一刀斎夢録」を読ませていただいたのですが、先生の書かれる作品には、人間の生きる力が込められていると感じます。今回、大野次郎右衛門を演じるにあたり、原作からたくさんのことをひも解いて人物像を広げていきたいです。望海さん演じる吉村貫一郎と大野は竹馬の友ですが、とても複雑な関係で一筋縄では演じられないような気がしておりますので、望海さんと心と心をぶつけ合いながら、お稽古に励みたいと思っています。これまで真彩の演じる役に想いを寄せる役どころが多く、 今回もそうなのですが、親友と、親友の愛した女性への想い、そして何より南部を愛している大野という人物を、心を込めて演じたいと思います。そして、ショー『Music Revolution!』ですが、中村先生の作品は、構成が色とりどりで、それぞれのシーンでパワーが爆発している印象がございますので、私自身も今持ちうるパワーを存分に爆発させ、望海さんを中心とした出演者全員で一生懸命取り組んでまいります。
『壬生義士伝』の脚本・演出は、時代物から現代劇、さらには独創性に富むショー作品まで幅広く手掛ける演出家・石田昌也が、そして『Music Revolution!』は、甘美かつモダンなショー作品や海外ミュージカルの演出に定評のある中村一徳が担当いたします。宝塚歌劇の魅力を熟知したベテラン演出家の手腕に、両作品への期待が高まります。
生身の人間を格好良く
石田昌也(『壬生義士伝』担当)
これまでの宝塚歌劇で新選組を扱った作品と今回の『壬生義士伝』との一番の違いは、近藤勇や土方歳三、沖田総司といった、いわゆる2.5次元に近い、ややキャラクター化された隊士を主人公にするのではなく、完全に2次元である小説で描かれている、汗の匂いのする生身の人間に近い、吉村貫一郎を主人公にしていることです。浅田次郎先生の原作の魅力は、殿様でも王子様でもない下級武士や市井の人々に視線を下げたところにあると感じますので、スーパーヒーローではなく、タカラヅカのトップスターとしては非常に珍しい、東北弁を話す下級武士の、“泥臭さを格好良く”描いてみたいという思いがあります。
また、浅田先生らしい視点にも注目しています。例えば、新選組は会津藩の“お抱え”ではなく“お預かり”でしたが、今で言えば“お抱え”は正社員、“お預かり”は派遣社員のような存在ですよね。そういったことを踏まえ、経済小説、あるいは経営小説のような観点から読んでも面白い小説ですので、男同士の友情や、男女の愛をベースに、そんな面白さもエッセンスとして加えられたらと思っております。
原作を書かれた浅田先生にも、歌と踊りが加わり、出演者たちが熱い想いで演じるタカラヅカ版『壬生義士伝』に改めて感動していただければ嬉しく思います。これから出演者とスタッフとともに頑張って創り上げますので、どうぞよろしくお願いいたします。
新しい時代を切り拓く雪組の姿をお見せしたい
中村一徳(『Music Revolution!』担当)
前回の『ファントム』に引き続きまして、また雪組とご縁をもつことになりました。望海風斗、真彩希帆、彩風咲奈はもちろん、雪組は今、歌も踊りも芝居もすべてが大変充実しておりますが、東急シアターオーブ公演『20世紀号に乗って』や宝塚バウホール公演『PR×PRince』を観て改めて実感いたしました。
『Music Revolution!』は、タイトルこそ“革命”ですが、歴史の教科書に出てくる“革命”のような重いテーマを持たせた作品ではございません。新しい時代を切り拓くという意味での“革命”を、今の雪組の進化していく姿とリンクさせて創りたいと考えています。“革命”といえば、ショパン作曲の「革命」を思い浮かべる方もいらっしゃると思いますが、それをテーマとした場面もございますので楽しみにしていただければと存じます。
音楽の成り立つ過程には、革命にまつわる苦しみであったり、革命が成功した喜びであったりすることがあります。あるいは、文化の融合によって新たな音楽が生み出されることもあります。音楽の背景にある人々の喜びや苦しみ、葛藤などのエネルギーを根底に据えながら、今の雪組の魅力を十分に発揮できる作品にしたいと考えておりますので、どうぞご期待ください。
先ほど『壬生義士伝』のパフォーマンスを見て、すでに明日からでも舞台の幕が開きそうなほど完成度が高く、素晴らしい作品になると確信しました。ショーも負けず、お客様に楽しんでいただけるように、これから出演者と一緒に稽古を重ねてまいりたいと思います。よろしくお願いいたします。