演出家 野口幸作が語る
演出家 野口幸作が語るショー・スペクタキュラー『BEAUTIFUL GARDEN −百花繚乱−』 の見どころ<前編>
究極のエンターテインメントを模索する注目の若手演出家・野口幸作。大劇場公演の3作目となる今作では、どのような“色とりどりの花が咲き薫る花園”を見せてくれるのか期待が高まる。
今回、初めて花組のショーを担当する野口に、今作への想いを聞いた。
今作のテーマは?
ずばり「百花繚乱」です。トップスターの明日海りおをはじめ、男役、娘役ともに、美しく華やかなショースターが揃う今の花組はまさに百花繚乱。その花組を「BEAUTIFUL GARDEN」、“美しい庭”に例えて、花にまつわるさまざまな恋人たちの夢とロマンを描き、今の花組の魅力を存分にお楽しみいただける作品にしたいと思います。花組の美しいスターと共に、真夜中の花園で愛を語らうような、耽美的かつ大人の雰囲気のショーを目指しています。
今作の見どころは?
今作では明日海の大人の男役としての魅力を、存分にお見せできればと思っています。また明日海は、とても芝居心のあるスターですので、それを生かすべく、ストーリー仕立ての場面を二つ用意しています。一つはANJU先生(元花組トップスター・安寿ミラさん)に振り付けていただく、伝説のマタドールの愛と死を描く場面です。もう一つは、ローマのグラディエイター(ローマ帝国の闘技会で戦った戦士)にまつわる場面で、ここでは力強さと退廃美をお見せしたいと思います。
そのほかの見どころは?
プロローグの総踊りでは、古き良きジーグフェルド・フォーリーズやMGMミュージカルなどを彷彿とさせるような、スペクタキュラーな演出を考えています。また、前作『SUPER VOYAGER!』(2017年雪組)のプロローグで各スターの芸名を歌詞に盛り込んだのですが、今回も、花をモチーフにしながら前回の発展系とも言えるスタイルを試みましたので、ぜひ楽しみにしていてください。
そのほかにも、今年生誕120周年を迎えるジョージ・ガーシュインの名曲を、現代的にアレンジした「ガーシュイン・メドレー」は、花組男役が持つ美学の頂点であるスーツやタキシード、黒燕尾のスタイルで展開する、究極に格好良いシーンです。もちろん、男役だけではなく娘役にも活躍してもらいます。
今回、花組公演を担当するにあたって。
ファンの皆さまがイメージされる花組の男役の美学をしっかりとお見せできる構成を考えています。また、娘役あっての宝塚歌劇であり、娘役も大変充実している今の花組ですので、ファンの方が渇望される「花美男子(HANAOTOKO)/ハナオトコ」「花美乙女(HANAOTOME)/ハナオトメ」を讃えるショーにしたいです。
新たな試みを盛り込む予定も?
世界的に注目されている4人組ダンスユニット「s**t kingz(シットキングス)」のOguri(オグリ)さんに、初めて振り付けをご担当いただきます。一つは、若い男女の恋模様をバート・バカラックの名曲で綴る躍動感溢れるダンス。さらに、11人の美青年ユニット「花美男子(HANAOTOKO)」が真夜中の街で歌い踊る現代的なシーンの、2場面をお願いしています。宝塚歌劇と「s**t kingz」という注目度の高いコラボレーションなので、ご期待いただければと思います。
今作は“スペクタキュラー・シリーズ”の第3弾となるが思い入れは?
このシリーズのモットーである“少し新しく どこか懐かしく かなり感動する”はそのままに、基本に忠実でありながらもビジュアルやサウンドを現代的にアレンジし、スターの個性を各場面に散りばめ、全体を通して宝塚歌劇の魅力を感じていただける作品を目指しております。スタッフや出演者と共につくり上げるこの“スペクタキュラー・シリーズ”は、これからも続けていきたいと思っています。
演出家 野口幸作が語るショー・スペクタキュラー『BEAUTIFUL GARDEN −百花繚乱−』 の見どころ<後編>
インタビュー<後編>では、明日海りおを中心とした花組の魅力を中心に話を聞いた。
花組トップスター・明日海りおの印象と魅力。
明日海の魅力は、美しさはもちろん、高いレベルの芝居を毎回見せてくれることではないでしょうか。私は彼女の宝塚バウホール初主演作『ホフマン物語』(2008年月組)の演出助手に入っていました。当時から演技力、歌唱力があり人間的な魅力にも溢れたスターでしたが、いまやトップスターとして堂々とした貫録も身につけています。今回の作品で、これまでに見たことのない明日海の姿と、もう一度見てみたい彼女の魅力のどちらもお見せしたいと考えています。
ほかに見どころとなる明日海の場面は?
明日海の代表曲になれば、という想いを込めて、新曲「ETERNAL GARDEN TAKARAZUKA(エターナル・ガーデン・タカラヅカ)」を書き下ろしました。いつも歌詞を考えるときは、歌い手の個性を最も大切にしているのですが、この曲は明日海のエッセイなども研究し、彼女にまつわるエピソードを歌にしています。花組の頂点で咲き誇る明日海りおが、宝塚歌劇への愛を歌い上げるシーンになると思いますのでご期待ください。
花組トップ娘役・仙名彩世の魅力や、今作で期待すること。
仙名の歌唱力と芝居心、何よりガーシュインのサポート役で恋人でもあるケイ・スウィフトに、彼女がぴったりだと思い、『フォーエバー・ガーシュイン』(2013年花組)ではヒロインを演じてもらいました。彼女は私の求めていた以上のヒロイン像をつくり上げ、その情熱や技術にはとても助けられました。作品を愛し、稽古場を明るくしてくれるうえ、歌・ダンス・芝居と三拍子揃っている、本当に頼もしい娘役です。今回、彼女が男役を従えて踊るシーンをつくりましたので、ショースターとしての魅力をさらに開花させて欲しいです。
花組トップコンビの印象。
明日海が大胆な舞台を見せ、それを仙名が支える、といった二人ならではのコンビネーションが素敵ですね。デュエットダンスでの呼吸がとても合っていますし、普段の何気ないやり取りを見ても、良いコンビだなと感じます。今作ではデュエットダンスを多く入れて、多彩なテイストの“みりゆきコンビ”をご覧いただく予定です。もちろん“歌手”としての二人の魅力的な歌もお聴かせしたいです。
柚香光の魅力と、今作での見どころは?
彼女の魅力は何といっても、芝居心に裏打ちされたダンス力だと思います。柚香は下級生の頃からダンスの表現で目を引く存在で、『フォーエバー・ガーシュイン』では有名なダンサー、フレッド・アステアを演じてもらいました。毎日どこか印象が違って、フリージャズのような、自由で美しい彼女のダンスにとても感心しました。今回の見どころとしては、約4分半をダンスだけで魅せる場面のセンターで踊ってもらいます。柚香の新しい魅力を引き出せたらと思います。
個性的な花組の男役スターについて。
まず、大人の男を演じられる瀬戸かずやは、「花美男子」と呼ぶにふさわしい男役です。花組の生え抜きであり、男役の魅せ方が徹底している彼女に、その美学を存分に発揮してもらいます。そして、鳳月杏には歌での見せ場をいくつか考えています。またかつて同じ月組だった明日海との関係性を垣間見られる、芝居仕立ての場面も用意しました。水美舞斗は華のあるスターで、今とても勢いを感じます。彼女が娘役と共に歌い踊るロケットの場面は私自身楽しみです。また柚香と水美という同期コンビの場面にも、ぜひご期待ください。
今の花組の印象は?
私が花組の作・演出を担当するのは、演出家デビューとなったミュージカル『フォーエバー・ガーシュイン』以来、5年ぶりとなりますが、下級生まで実力者が揃っていますね。ショーでは“スターたちの魅力をいかに見せきるか”が大切だと思っていますが、見せるべき人が多く、ショー作家としてやりがいを感じますし、とても楽しいです。
最後にお客様へメッセージを。
今年の宝塚大劇場公演は、幅広い内容のショーが上演されてきましたが、今作が2018年最後の大劇場での洋物ショーになります。そこで、ショーの基本を大切に、ご覧いただいたすべての皆さまに「宝塚歌劇を観た」とご満足いただけるものを創るべきだと思っています。ぜひ夏休み期間の宝塚大劇場や、過ごしやすい秋の東京宝塚劇場へ、花組の美しい花々を観にいらしてください!
【プロフィール】
野口 幸作
神奈川県出身。2006年宝塚歌劇団入団。2013年に『フォーエバー・ガーシュイン』(花組)で演出家デビュー。2014年にフランスの文豪スタンダールによる小説をミュージカル化した『パルムの僧院 —美しき愛の囚人—』(雪組)、2015年にフレッシュな若手スターを中心としたワークショップ公演『A-EN』(月組)を発表し、好評を博した。2016年には究極のエンターテイナーをテーマにした『THE ENTERTAINER!』(星組)で、宝塚大劇場デビュー。続く2017年には新生雪組の大劇場お披露目公演となる『SUPER VOYAGER!』(雪組)を手掛けた。これまでに発表した大劇場作品は“スペクタキュラー・シリーズ”と銘打ち、今作はその第3弾となる。