宝塚歌劇×『ガイズ&ドールズ』

スカイ・マスターソン(大地 真央)、サラ・ブラウン(黒木 瞳)【1984年・月組公演】

 1948年頃のニューヨーク。タイムズ・スクエア界隈では“カオ”のギャンブラーであるネイサン・デトロイトは、14年間婚約したままの、ナイトクラブ「Hot Box」の花形歌手アデレイドをそっちのけに、クラップゲーム(サイコロ賭博)に夢中。クラップゲームを開きたいのだが、ブラニガン警部の取り締まりが厳しく、場所が見つからずに困り果てていた。目をつけていたビルトモア・ガレージも、持ち主のジョーイ・ビルトモアに前金千ドルを払わないと貸せないと言われてしまう。もちろん、ネイサンにそんな金などあるはずもないが、ギャンブラー達はネイサンにクラップゲームの開催をせがむばかり……。
 ネイサンが頭を悩ませていると、ラスベガスで5万ドルを儲けて上機嫌なスカイ・マスターソンがやって来る。ビルトモア・ガレージを借りるための前金千ドルを手に入れたいネイサンは、自分が指名する女をスカイが一晩で口説き落とせるかどうかに千ドル賭けようじゃないかと、スカイに賭けを申し込むのだった。プレイボーイを自認するスカイは余裕たっぷりにこの賭けに乗る。
 ところが、ネイサンが指名した女は、よりによってお堅い事で有名な救世軍の娘サラ・ブラウンだった。スカイは果敢にも教団に乗り込み、サラに接近した。教団が開く集会に人が集まらず、伝道の成果が中々上がらないことにがっかりしている様子のサラを見て、スカイはサラがディナーを共にしてくれたら、次の集会に1ダースの罪人を出席させようという取り引きを持ちかける。しかし、根っからの潔癖症のサラは頑にスカイを拒む。それでもスカイは言葉巧みにサラの心に入り込み、思わずスカイに惹き込まれたサラはそんな自分に驚いて、スカイを殴ってしまう。
 そんな折、教団へカートライト将軍が訪れる。信者の少ないこのブロードウェイ支部を閉鎖すると言うのだ。サラ達は必死に支部の存続を嘆願するが、状況は厳しいものだった。そこへスカイが現れ、明日の夜の特別布教会には必ず人々が集まることを保証するから、猶予を与えてやって欲しいと話す。サラも教団の存続のために、ついにスカイの申し出を受け入れるのだった。   

スカイ・マスターソン(紫吹 淳)、サラ・ブラウン(映美 くらら)【2002年・月組公演】

 一方、ネイサンは依然、ゲームの場所を確保出来ていなかった。スカイとの賭けの千ドルは手中にいれたも同然と思っていたが、今夜のクラップゲームの開催場所の資金には間に合いそうもないのだ。そんな時、クラップゲームの開催場所を突き止めようと、ブラニガン警部がネイサンの周辺を嗅ぎまわるが、ギャンブル仲間のナイスリー達はネイサンとアデレイドの結婚前祝いパーティーをするとうそぶき、難を逃れることが出来た。クラップをやりたくてはるばるシカゴからやってきた大物ギャングのビッグ・ジュールに急かされたネイサンは、ある妙案を思いつく…。

 スカイはとうとうサラを連れ出す事に成功した。相変わらず堅い雰囲気のサラにスカイは少々うんざりしていたが、ハバナの開放的なムードの中でカクテルを飲んだサラは、酔っぱらってカフェで乱闘騒ぎを起こしてしまう。スカイは戸惑いながらも、すっかり心を預けた様子のサラに愛しさを覚えるが、そう思えばこそ、酔っぱらっている彼女を口説く気にはなれないのだった。
 そうして何となく気まずい想いで二人は夜明けのニューヨークへ戻って来た。昼間の喧騒とは掛け離れた夜明けの街の静けさに二人は素直な気持ちになり、そっと寄り添い合うのだった。そこへ徹夜の集会から戻って来た救世軍の一行が教団へ入ろうとすると、けたたましいサイレンの音が響き、中から慌てふためいた様子のネイサン達が出て来る。ネイサン達は大胆にも留守中の教団内部でクラップに興じていたのだ。サラは、スカイがこのために自分を騙して連れ出したのだと思い込み、傷つき去って行ってしまう。   

 アデレイドはやっとネイサンが結婚を決意してくれたと大喜びだったが、結婚前祝いパーティーの当日、ネイサンにまたしてもすっぽかされてしまう。賭博からきっぱり足を洗ってくれないネイサンに憤まんやるかたない様子のアデレイドだが、それでも彼を愛していた。スカイはギャンブラーと付き合うのはやめた方が良いとアデレイドに忠告する。それは、自分もまたサラに相応しくないと感じているからだった……。
 サラを本気で愛してしまったスカイはその想いを断ち切る為にニューヨークを去る決意をしていた。そしてその前にサラとの約束を守るために、ネイサン達に賭けを申し込む。その賭けとはスカイが勝てば皆は教団の集会に出席し、スカイが負ければ皆に千ドルずつ払うというものだった。なんとしてもサラの力になりたいスカイにとっては、どうしても負けられない賭けだった。
 果たして運命の女神は誰に微笑みかけるのだろうか……?