演出家 中村暁が語る
スーパー・ファンタジー 『Dream Chaser』の見どころ
軸となるテーマのもと、そこから拡がる多彩な世界へと導くショー作品を生み出し続けてきたベテラン演出家・中村暁。煌びやかでゴージャスな今作は、月組トップコンビ・珠城りょうと美園さくらの退団公演でもある。二人のラストステージに、中村はどのような夢を描くのか。作品にかける意気込みを聞いた。
珠城りょう率いる月組と一緒に、いざ夢を追いかける旅へ!
今作の場面構成を教えてください。
タイトルの“Dream Chaser”とは、“夢を追い求める人”です。今作は8つのシーンで構成していますが、タイトルのとおり、月組全員が“Dream Chaser”となって、「一緒に夢を追いかけよう!」と皆さまに誘いかけるプロローグから、ショーが始まります。
プロローグの後には、どのような場面が続きますか?
まず第2章の「情熱」で、美園さくらを巡っての鳳月杏と暁千星の争いを、スパニッシュの音楽に乗せて描きます。
続く第3章は、珠城りょうが中心となる場面「ミロンガ」です。珠城たちが繰り広げる“ミロンガ(タンゴの舞踏会)”をご堪能ください。
「情熱」「ミロンガ」では、ヴァイオリニストの葉加瀬太郎さん、古澤巖さんの素敵な楽曲を使わせていただきますので、そちらもお楽しみに。
次の第4章では、月城かなとが若手スターたちを率いて、2PMさんのK-POP楽曲「I'll be back」を歌い踊り、ホット&クールなダンスパフォーマンスをお見せします。
中詰め以降の見どころは?
中詰めは「Dawn(暁)」と題し、夜明けを迎えるような希望に満ちた想いを、和風テイストのロックメドレーで綴っていきます。
その後は、皆さまに少しでも明るい気持ちになっていただきたいという想いを込めた「Hymn of life(命の賛歌)」です。以前とは大きく変わってしまった現状に不安を感じている方も多いと思います。このような時代だからこそ、明日への希望や輝きをお届けできれば嬉しいですね。
そしてフィナーレですね。
宝塚歌劇の伝統的な男役のスタイルの一つである黒燕尾での群舞や、娘役がかっこよく踊るナンバー、トップコンビのしっとりとしたデュエットダンスなど、“これぞタカラヅカのダンス”というものを詰め込んだフィナーレナンバーをご用意しています。
トップコンビへのはなむけに、胸に刻めるステージを
トップスター・珠城りょうの、ショーにおける魅力や、今作での見どころは?
珠城がトップスターに就任してからのショー『CRYSTAL TAKARAZUKA-イメージの結晶-』(2017年全国ツアー)を演出した時に感じたのですが、客席を優しく包み込むような、とてもスケールの大きいスターですね。それに、男役らしい力強さもあります。この公演でも、彼女の多彩な面をご覧いただこうと思っています。例えば、黒燕尾の男役を率いて踊る場面は、厳粛なムードというよりは、激しいリズムのダンスを予定しています。そこから曲調がガラリと変わって、惜別の想いを込めた美園とのラストダンスへと続きますから、珠城の持つ“強さ”と“優しさ”のどちらも楽しんでいただけるのではないでしょうか。
相手役の美園さくらも今作が退団公演となります。
歌声とダンス、どちらも美しく伸びやかなところに、ショーでの美園の魅力を感じます。今回、いくつか彼女を中心とした場面を用意していますが、フィナーレナンバーでは娘役を率いてもらいます。ここで、シャープでキレのあるダンスで印象づけた後に、まったく趣の異なるデュエットダンスを踊るので、その変化や魅せ方にも期待しています。パレードではエトワールとして、彼女の美声をお聴きいただきます。
珠城、美園のトップコンビとしての集大成でもありますね。
二人とも大変舞台映えしますし、大人の色気のあるコンビですよね。特に、デュエットダンスのような二人だけのシーンでは、お互いを包み込んでいくような、落ち着いた柔らかさが伝わってきて、とても魅力的だと思います。このコンビを見られるのもこれが最後と思うと、とても寂しいですね。
月城かなとの活躍も楽しみです。
登場するだけでパッと目を惹く華やかな存在感もあり、ますます楽しみなスターです。特に、若手スターたちの中心となる「I’ll be back」のシーンは、彼女にとっても新たな挑戦になるでしょうし、今までの月城とは違う一面も見せてくれるのではないかと思っています。
月組には他にも、個性豊かなスターが揃っていますね。
鳳月と暁は共に、歌でもダンスでも、しっかりと魅せることのできる実力派のスターです。彼女たちの見せ場であるスパニッシュやタンゴの場面など、どのように盛り上げていってくれるのか、私自身、ワクワクしています。また、フィナーレ幕開きの歌を担当する風間柚乃ほか、若手スターたちの活躍にもご注目ください。
最後に、お客様へのメッセージを。
この公演から全員揃って出演できることになり、出演者全員が、より結束を強めています。珠城りょう、美園さくらが退団することへの寂しさはありますが、二人へのはなむけとなる舞台をみんなで盛り上げていこう、という意気込みが、稽古場でも伝わって来ます。私も、二人を送り出す公演として、お客様と出演者が胸に刻めるようなステージを創っていきたいと思っておりますので、どうぞご期待ください。
【プロフィール】
中村 暁
大阪府出身。1977年宝塚歌劇団に入団。1985年、アメリカのハイスクールを舞台にした青春ドラマ『スウィート・リトル・ロックンロール』(月組)で演出家デビュー。『黄昏色のハーフムーン』(1990年雪組)で宝塚大劇場デビュー。『サジタリウス』(1994年雪組)で初めてショー作品を手掛ける。その後『ドリアン・グレイの肖像』(1996年星組)、『マノン』(2001年花組)、『麗しのサブリナ』(2010年花組)など芝居作品も多数手掛け、ベールに包まれた時代をイマジネーション豊かに舞台化した古代ロマン『邪馬台国の風』(2017年花組)、恋と野望に彩られた青年の波乱の人生を描いた名作『赤と黒』(2020年月組)の再演でも好評を博した。近年は『Dance Romanesque(ダンス ロマネスク)』(2011年月組)、『GOLD SPARK!-この一瞬を永遠に-』(2012年雪組)、『CRYSTAL TAKARAZUKA-イメージの結晶-』(2014年月組、2017年月組)、『VIVA! FESTA!』(2017年宙組)、『ESTRELLAS(エストレージャス) ~星たち~』(2019年星組)など、タカラヅカ的な伝統の中に現代的なセンスが光るショー作品を次々と発表している。