『アウグストゥス-尊厳ある者-』の世界
『アウグストゥス-尊厳ある者-』では、柚香光が演じるローマ史上初の皇帝アウグストゥス帝(オクタヴィウス)の若き日が、フィクションと史実とを織り交ぜて描かれます。ここでは、作品の舞台となる古代ローマの世界を紐解く、4つのキーワードをご紹介します。
古代ローマの世界を紐解く、4つのキーワード
オクタヴィウスが生きた時代
イタリア中⻄部にある、⾸都ローマ。後に「すべての道はローマに通ず」と言われるほどに栄華を誇る帝国の基礎となった都市国家ローマは、伝説では紀元前8世紀の中頃に、七つの丘に囲まれたこの地に建国されたと言われています。
建国から約200年後の紀元前6世紀には、貴族を主軸とした共和政によって、独裁政治を防ぐ仕組みを取り入れ、強い軍事力で徐々に地中海世界へと領土を広げていきました。
『アウグストゥス-尊厳ある者-』の舞台は、約500年続いた共和政が帝政へと変わる大きな節目にある紀元前46年。ガイウス・ユリウス・カエサルが敵対するポンペイウスを倒し、権力を一手に握っていった時代から始まります。
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主人公オクタヴィウス(柚香光)は名門ユリウス家の末裔で、カエサル(夏美よう)の大甥。物語の始まりに開かれる宴の招かれざる客、ポンペイア(華優希)は、カエサルによって失脚させられた政敵ポンペイウスの娘です。登場人物の想いが交錯するシーンは要チェックです。
オクタヴィウスたちがいた「元老院」ってどんなところ?
物語では、オクタヴィウスはカエサルに命じられ、若くして元老院の議員になります。この「元老院」とは、共和政ローマの重要な諮問機関で、さまざまな問題を議論し、法を制定していました。当初は貴族から選ばれた議員で構成されていましたが、次第に平民からも議員が選ばれるようになり、時代ごとに派閥が生まれては争いが起こっていました。古代ローマ時代の遺跡を見ることができるローマのフォロ・ロマーノには、「クリア・ユリア」と呼ばれる元老院議事堂が残っています。
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元老院議員には、一兵卒からのし上がった野心家の執政官、マルクス・アントニウス(瀬戸かずや)や、元ポンペイウス派の議員キケロ(高翔みず希)、カッシウス(優波慧)、カエサルに私怨を持つブルートゥス(永久輝せあ)などがいました。それぞれに思惑を抱いた彼らのとる行動とは…?
「エジプト」とローマはどんな関係だったの?
アフリカ大陸の北東に位置するエジプトは、当時、紀元前4世紀から約300年間続いたプトレマイオス朝の時代でした。首都アレクサンドリアは、地中海世界ではローマの次に大きな都市でしたが、周辺諸国との対立や先住民の独立運動、王位の争いなどが生じ、国の力が弱まっていました。プトレマイオス朝最後の女王クレオパトラ7世は、地中海世界で影響力を強めていた共和政ローマのカエサルやアントニウスとの関係を深めることで、何とか国を存続させようとしていたと言われています。
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大変魅力的な女性であったと言われる、エジプト女王クレオパトラ7世(凪七瑠海)は、カエサルの愛人として登場します。オクタヴィウスの姉オクタヴィア(音くり寿)という婚約者がいながら、彼女の虜となるアントニウス。絡み合う4人の愛の行く末は如何に?
「アウグストゥス」と「パクス・ロマーナ」って何?
国内外の争いを収め、権力者による内乱の時代に区切りをつけたオクタヴィウスは、独裁官にはならず、共和政の下、民衆の心を掴むことで国を治めます。こうしてローマの政治に欠くことのできない存在となり、元老院から「アウグストゥス(尊厳者)」の称号を贈られ、ローマの初代皇帝となります。上下水道や貯水槽などのインフラ整備、街道を活用した郵便制度の創設、大理石の神殿や凱旋門の建造などで、ローマをより帝国の首都として相応しい豊かな街へと変えていきました。内政を充実させたアウグストゥス帝の治世から約200年間は「パクス・ロマーナ(ローマの平和)」と呼ばれ、平和な時代であったと言われています。
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花組公演では、青年オクタヴィウスが初代ローマ皇帝として「アウグストゥス」と称されるようになるまでが描かれます。オクタヴィウスを補佐するアグリッパ(水美舞斗)やマエケナス(聖乃あすか)など、後にアウグストゥス帝政を支えていく仲間との関係にも注目です。
憎しみが引き合わせたオクタヴィウスとポンペイアの心の葛藤と移ろいを映しながら、ローマ史上に名高い皇帝アウグストゥスが誕生する前段の物語を、壮大なスケールで描く花組公演『アウグストゥス-尊厳ある者-』。魅力溢れる登場人物たちが紡ぐ人間ドラマに、是非ご期待ください!