制作発表会レポート
9月8日(木)、宝塚歌劇月組公演 ザ・ミュージカル『グランドホテル』、モン・パリ誕生90周年 レヴューロマン『カルーセル輪舞曲(ロンド)』の制作発表会が行われました。
宝塚歌劇団 理事長・小川友次、演出家の岡田敬二、稲葉太地、生田大和、月組トップスター・珠城りょう、月組トップ娘役・愛希れいか、美弥るりかが出席。さらに『グランドホテル』のオリジナル演出・振付を手掛けられ、今作の特別監修をしていただくブロードウェイの至宝、トミー・チューン氏も登壇。華やかな雰囲気に包まれた制作発表会の模様をお届けします。
新生月組のスタートに相応しい豪華な名作&レヴュー
『グランドホテル』は1928年のベルリンを舞台に、さまざまな人生が交錯する最高級ホテルの一日半の出来事を、薫り高い音楽で綴った傑作ミュージカル。1989年トミー・チューン氏演出・振付によりブロードウェイで開幕、トニー賞を5部門で受賞し、その後ロンドンやベルリンでも上演されました。宝塚歌劇では1993年、涼風真世を中心とする月組で宝塚バージョンを上演。トミー・チューン氏を演出・振付に迎え、オットー・クリンゲラインを主役に生きる喜びを謳い上げた重厚かつスケール感溢れる人間ドラマを創り出し、大きな感動を呼びました。いまなお語り継がれる名作が、新月組トップスター・珠城りょうの宝塚大劇場・東京宝塚劇場のお披露目公演として、24年ぶりに蘇ります。珠城りょうが演じるフェリックス・フォン・ガイゲルン男爵を主人公に、新たなシーンや楽曲も加わる新生『グランドホテル』。ラファエラ・オッタニオ、エリック、フラムシェンという重要なキャラクターの役替わりにもご注目ください。
『カルーセル輪舞曲(ロンド)』は、日本初のレヴュー『モン・パリ』誕生から90周年を記念し、世界巡りの旅を華やかなステージングで魅せるレヴューロマン。宝塚歌劇が紡いできたレヴューの歴史へのオマージュを込めて、『宝塚幻想曲(タカラヅカ ファンタジア)』などヒット作を手掛けてきた演出家・稲葉太地がバラエティ豊かにお届けします。月組トップスター・珠城りょうを中心とする新生月組のフレッシュでパワフルな魅力を存分にお楽しみください。
役柄の“人生”が滲み出るパフォーマンスや歌に大きな拍手
制作発表会ではまず、モン・パリ誕生90周年 レヴューロマン『カルーセル輪舞曲(ロンド)』のパフォーマンスからスタートしました。
月組トップ娘役・愛希れいかが、澄んだ歌声で名曲「吾が巴里」を披露し、華やかでクラシカルな『モン・パリ』の世界観、レヴューの優雅さを伝えます。
続いて月組トップスター・珠城りょうが登場、まばゆいスパンコールが煌めく衣装で、主題歌「カルーセル輪舞曲(ロンド)」を明るく伸び伸びと披露。新月組トップスターの誕生にぴったりの希望に満ちた歌詞に、新生月組への期待が高まります。
次は一転、重厚な伴奏とコーラスが流れ『グランドホテル』のパフォーマンスへ。オープニングのナンバー「Grand Parade」とともに、オッテルンシュラーグ(夏美よう)のナレーションによって、次々とキャラクターが紹介されます。
最初に登場したのは、愛希れいか扮するエリザヴェッタ・グルーシンスカヤ。優美な真紅の衣装、ゆったりとした足取りと表情からプリマバレリーナの品格が伝わってきます。次は美弥るりか扮するオットー・クリンゲライン。重い病を患い、最期の時を高級ホテルで過ごそうと全財産をカバンに詰めてやってきた彼の悲哀と希望が、大きめのコートに身を包んだその姿、一挙手一投足に満ちています。そして珠城りょう扮するフェリックス・フォン・ガイゲルン男爵が登場。女性の心を溶かす魅惑的で洗練された男爵の存在感を堂々と表現。3人の歌声が交わり重層的なドラマを予感させます。
続いてガイゲルン男爵とグルーシンスカヤによる「恋なんて起こらない(Love Can't Happen)」。二人が思いがけない状況で出会い徐々に恋に落ちていく様を、ドラマティックなメロディに乗せて高らかに歌い上げます。高揚した心がピタリと重なり合うような陶酔感をもたらす熱唱に、大きな拍手が送られました。
次は『グランドホテル』の中でも屈指の心弾むナンバー、「一緒にグラスをとろうよ(We'll Take A Glass Together)」。ガイゲルン男爵とオットーが手をつなぎ、チャールストンを踊りながら陽気に歌います。二人の友情や人生に“乾杯”する軽快なナンバーに、最後はグルーシンスカヤも加わり大きく盛り上がりました。
世界大戦の狭間という時代に、お金や名声、命の灯……さまざまな悩みや事情を抱えた人々が集まる『グランドホテル』。美しいラブロマンス、友情、生命の営みなどあらゆる人生の妙が詰まった名作に、“芝居の月組”の伝統を受け継ぐ新生月組が挑みます。また舞台人、男役としての資質に恵まれた若きトップスター・珠城りょうの、大きなスタートとなるお披露目公演。『カルーセル輪舞曲(ロンド)』でも、新たなスター性を発揮し魅せてくれるでしょう。月組の歴史に大きな1ページを刻む充実の二本立て公演、ぜひ劇場でお楽しみください!
- 制作発表会 ムービー
パフォーマンスを披露したあとに月組の珠城りょう、愛希れいか、美弥るりかの3名も意気込みを語りました。
月組トップスター 珠城 りょう
これらの作品に出演できる幸せを日々感じ、心から感謝
「わたくしごとですが、岡田先生の作品が初観劇で宝塚に入りたいと思いました。入団以降、岡田先生とご一緒する機会がなかったのですが、今回、私のトップお披露目公演を担当していただくことになり、深いご縁を感じております。また、稲葉先生、生田先生には新人公演時代から大変お世話になり、色々な引き出しをつくっていただきました。3人の先生方、さらにトミー・チューンさんをお迎えして作品を創っていけること、すべての奇跡に心から感謝いたします。まだまだ舞台人として男役として、磨いていかなければならないところがたくさんあるのですが、今の自分に出来る精一杯の努力をし、今の月組の力を結集した二作品に仕上げていきたいと思います。」
●月組トップスターとしての想い
「月組は本当に下級生にいたるまでエネルギーにあふれ、一人ひとりの舞台に懸ける想いが熱い組です。その先頭を走っていくうえで、私が一番舞台に対してひたむきに明るく務めていけたらと思います。 “こうあらねば”と思うのではなく、月組の皆さんと一緒に、月組生の想いを受けて一歩一歩力強く歩んでいきたいです。」
月組トップ娘役 愛希 れいか
一年の幕開け、新しい月組のスタートに相応しい作品に
「私は『グランドホテル』ではエリザヴェッタ・グルーシンスカヤ役を演じさせていただきます。バレリーナなのですが、生きる希望や踊ることへの情熱を失っている女性です。そんな彼女がガイゲルン男爵に出会うことで、愛すること愛されることの喜びと、踊りへの情熱を取り戻していきますので、その変化を大切に、私なりにしっかりと演じてまいりたいと思います。また、『カルーセル輪舞曲(ロンド)』につきましては、稲葉先生からまだ構成を伺っただけですが、すでに気持ちはワクワクしています。本作は宝塚大劇場のお正月公演となりますので、一年の幕開けに、そして新しい月組のスタートに相応しい作品になるのではないかと、今からとても楽しみにしております。どうぞよろしくお願いいたします。」
月組 美弥 るりか
オットー役に出会えたのは奇跡。魂を込めて演じたい
「実は私が生まれて初めて劇場で観た舞台が『グランドホテル』だったのですが、その時に涼風真世さんが演じた主役のオットー・クリンゲラインという役に深い感銘を受け、宝塚音楽学校を受験することを決めました。その大変思い入れのある作品で、自分がオットー役を演じることが夢のようですし、この役に出会えた奇跡に感謝しつつ、魂を込めて大切に演じたいと思っております。人間の色々な想いが詰まった素晴らしい作品ですので、幼い頃には分からなかったところまで突き詰め、私なりに役をもっともっと深めていきたいです。また稲葉太地先生の作品では『GOLDEN JAZZ』に以前出演させていただきましたが、稲葉先生のショーは、出演者一人ひとりがどういう場面でどういうパフォーマンスをすると一番輝くか、という細かなこだわりが詰まっているところが魅力です。今回私もどんな新しい自分に出会えるのか、大変楽しみです。」
ザ・ミュージカル『グランドホテル』の演出を担当するのは、長年にわたり新しい視点でエレガントなオリジナルレビューを創り続ける岡田敬二と、独創的な世界観で注目を集める新進気鋭の生田大和。岡田敬二は不動の人気を誇る“ロマンチック・レビュー”シリーズなどを送り続ける一方で、『ディーン』『キス・ミー・ケイト』といった海外ミュージカルも数多く手掛け、1993年の『グランドホテル』『BROADWAY BOYS』ではトミー・チューン氏と共同演出。作品に大きく貢献し、成功へと導きました。今作では特別監修を務められるトミー・チューン氏とともに、新たな心意気で名作に向かいます。また、『ラスト・タイクーン —ハリウッドの帝王、不滅の愛—』『Shakespeare ~空に満つるは、尽きせぬ言の葉~』に続き三度目の大劇場公演の演出に挑む生田大和も緻密に名作を構築し、今の月組の魅力を引き出しながら観るものを感動へと誘うことでしょう。
モン・パリ誕生90周年 レヴューロマン『カルーセル輪舞曲(ロンド)』の作・演出を担当するのは、『Mr. Swing!』『パッショネイト宝塚!』『宝塚幻想曲(タカラヅカ ファンタジア)』など、多彩なテイストのショー作品を生み出す稲葉太地。2015年に『GOLDEN JAZZ』も手掛けた月組で、組の魅力を活かした壮大なレヴュー作品を生み出します。
岡田 敬二(『グランドホテル』担当)
宝塚歌劇団の歴史上大きな冒険、記念碑的作品となった
「1993年当時、『グランドホテル』『BROADWAY BOYS』を上演するために、1年2カ月の打ち合わせ、3カ月の稽古期間を費やしました。宝塚歌劇団のスタッフとブロードウェイのスタッフが組み、作品を創り上げることは宝塚歌劇団にとっても大きな冒険でしたが、記念碑的作品となりました。今回またトミー・チューン氏とお仕事ができるということで、再び夢が叶い嬉しく思っております。『グランドホテル』の演出を望む演出家は、宝塚歌劇団の中に大勢いたのですが、このたび成長著しい生田大和先生にお願いすることにしました。わたくしは53年間宝塚歌劇団に在団しており、今は力の限りレビューの灯をともしながら、世界で唯一の宝塚歌劇団の精神を守ってくれる後進の演出家を育てる立場にあると思っております。『グランドホテル』の演出家として、もちろん全体を俯瞰し、トミー・チューン氏のバージョンを守ることに懸命に取り組みながら、ディテールに関しては生田くんが研究を重ねながら詰めていってくれるだろうと期待しております。」
生田 大和(『グランドホテル』担当)
男爵とグルーシンスカヤに焦点を当てて抜粋し再構成
「演出を担当するにあたってあらためて資料をひも解いていくと、そのスピリットや哲学的なエッセンス、心、そして美しい演出と、すべてが天才のなせる業ではないかという思いにいたり感動しました。1958年にルーサー・ディヴィス(脚本)さんたちがまずミュージカル化を試みられ、30年の時を経て1989年にトミー・チューンさんの演出、モーリー・イェストンさんの新たな楽曲によって完璧な形に仕上がりました。1993年、宝塚歌劇の初演ではオットー・クリンゲラインに焦点を当てましたが、今回は男爵とグルーシンスカヤに焦点を当て、抜粋の仕方を見直し再構成いたします。そのために演出まで変えることは基本的にありません。あくまでトミー・チューン氏の創られた世界観、スピリットを掘り下げていきたいと思います。」
──新生月組・珠城りょうの魅力について
「今の月組は大変芝居巧者が揃っている組という印象があります。脇を固めている上級生、下から支える下級生、その層が厚く、勢いがあって素晴らしい。珠城とは彼女の新人公演初主演作『THE SCARLET PIMPERNEL(スカーレット ピンパーネル)』(2010年)の演出を担当し、体の中に満ちているエネルギー、その熱と光の強さに驚いたのをよく覚えています。スタイルの良さなど男役として恵まれたものを持ちながら、それに甘えず努力を積み重ねてきた人。男爵の持っている優雅さ、生き抜くための代償、そういったものを深めるうえで、彼女自身が持つ明るさも役創りの大きな材料になるのではと思います。」
稲葉 太地(『カルーセル輪舞曲(ロンド)』担当)
表現者として一流だと感じる月組生に大きな期待
「わたくしごとですが、23年前に東京宝塚劇場で『グランドホテル』『BROADWAY BOYS』を拝見しました。暑い7月の公演だったと記憶していますが、そのときにエンターテインメントの素晴らしさをとても感じました。その大好きな『グランドホテル』の再演にあたり、そのあとに上演するショー作品を担当させていただくことを、大変光栄に思っております。珠城を中心とした月組の魅力を最も活かすことが、本作で私に与えられた最大の使命だと感じておりますので、新生月組が繰り広げる一番素晴らしいレヴューを目指して、皆と一緒に作品づくりに取り組みたいと思っております。」
──新生月組・珠城りょうの魅力について
「2015年末から2016年の冒頭にかけて、月組公演のショー『GOLDEN JAZZ』を担当させていただきました。その時に感じたのが、上級生から下級生まで“表現者として一流だ”ということです。下級生は上級生の背中を見て育つと言いますが、課題のある学年の下級生も、ものすごいエネルギーを発散してくるんですね。それは前に立つ上級生が、“舞台上では常に何かを表現しないと許されない”というほどまでに芸を突き詰めて考えているから。珠城も愛希もそういう上級生の背中を追い続けて今の立場にいるわけで、表現者として大変楽しみです。この公演から月組組長も交代し、本当に5組の中で組長、トップスターともに一番若い組になりますが、受け継いでいく精神は変わらないと思いますので、きっとお芝居、レヴューともに素晴らしいパフォーマンスを魅せてくれるでしょう。」