メッセージ

[原作] 和月 伸宏
 NOBUHIRO WATSUKI

今回の舞台化の御話を初めて伺った時、そのビジョンが全く見えず正直戸惑いました。一介の漫画家の自分にとって“宝塚歌劇”と言えば、漫画の神様・手塚治虫先生が愛好してそのエッセンスを取り入れ描いた「リボンの騎士」と、もはや代名詞と言っても過言では無い池田理代子先生の傑作「ベルサイユのばら」。華やかで煌びやかな愛とロマンスの少女世界に少年漫画ド真ん中の「週刊少年ジャンプ」作品が果たして上手く調和できるものなのか…?
ともあれまずは実際の宝塚歌劇を知る必要があるなと考え勉強のつもりで初観劇に足を運んだ所、三時間後、其処にはその素晴らしいエンターテイメントに魅了されすっかり楽しんでいる自分が居ました。
この舞台で自分が描いた「るろうに剣心」を観るコトが出来たら嬉しいなぁ。単純に純粋にそう感じました。   

©和月伸宏/集英社

「るろうに剣心」は新時代・明治を創るため、人殺しの剣を振るった男がその新時代の中で今度は不殺の剣を以って人々を守って生きる様を描いた二律背反と贖罪の物語です。これまで様々なアプローチの仕方でアニメ化や実写映画化されました。今回の舞台化に当たって小池先生はじめ宝塚歌劇団のスタッフの方々と幾度かの打ち合わせを重ねた結果、原作に漫画らしさとして内包されている“明るさ”や“楽しさ”をしっかり捉えた上で宝塚歌劇らしさを演出する旨となりました。
その最たるのが今回宝塚オリジナルキャラクターとして生まれた伝説の新撰組隊士「加納惣三郎」で、剣心の恋敵というこれまでのどのメディアにも登場しなかった正に宝塚歌劇にこそふさわしい役どころです。

小池先生の情熱溢れるスタンス、スタッフの方々の実直な仕事振り、そして雪組の皆様の実力に裏打ちされたその演技。今回の公演が百年を越える宝塚歌劇の美しい歴史を更に先へと繋ぐ力の一つになることを確信しています。
そして、宝塚ファンに「るろうに剣心」を楽しんで頂ける、るろうに剣心ファンに「宝塚」を楽しんで頂ける絶好の機会になることを願っています。