制作発表会レポート
2015年3月11日(水)、宝塚歌劇月組公演 かんぽ生命 ドリームシアター スペクタクル・ミュージカル『1789 -バスティーユの恋人たち-』の制作発表会が行われました。
宝塚歌劇101年目という新たな時代に、フランス・パリで初演し、絶賛を博した作品が、いよいよ日本初上演。宝塚バージョンとして、更なる可能性に挑戦する本作とは?!
2015年4月24日にベールを脱ぐ本公演、一体どんな舞台が生まれようとしているのか、公演に先立ち制作発表会の模様をレポートします。
いよいよ日本初上演! 新感覚のフレンチ・ロック・ミュージカル
まずは、月組出演者により作品の世界観をギュッと凝縮したパフォーマンスを披露。
月組トップスター・龍真咲(ロナン・マズリエ役)、月組トップ娘役・愛希れいか(マリー・アントワネット役)、凪七瑠海(カミーユ・デムーラン役)、美弥るりか(シャルル・アルトワ役)、珠城りょう(マクシミリアン・ロべスピエール役)が次々と登場しました。
龍真咲を筆頭に、斬新な楽曲を圧倒的な歌唱力で歌い上げ、一気に壮大な作品世界に誘う。
♯1「二度と消せない」龍真咲
♯2「許されぬ愛」愛希れいか
♯3「サ・イラ・モナムール」龍真咲、凪七瑠海、美弥るりか、珠城りょう
101年目の新たな挑戦。日本初上演の大作ミュージカルへの思い
制作発表会の会見では、演出家・出演者が作品に対する意気込みを語りました。
明日への希望になるような作品に…
演出家 小池修一郎
「この作品は、歴史的事実としてあった出来事を脚色し、ミュージカル化されています。フランス革命で名を残した人ではなく、龍演ずる地方出身の青年であるロナンが革命の中に身を投じて行くというドラマです。宝塚版は、ロナンの生き方、また彼と同じ時代を生きた人々、それぞれの生き方も並行して追っていく形を、より明確に出していこうと思っております。稽古も始まったばかりで、作品としての生みの苦しみのようなものがあるとしますと、まだまだ陣痛というところですが、ご期待いただければと思います。この作品を通じて、困難な時代を生き抜く人々の姿をお伝えすることにより、今を生きる私たちにとって、明日への希望を持つ、一つの糧になればと思っております」
日本初上陸、作品のエネルギーをしっかりと持ちたい
月組トップスター 龍真咲
「日本初上陸、初上演のこの作品に、我が月組が携わらせていただけますこと、心より嬉しく思っております。本日、パフォーマンスを披露して、いよいよ待ちに待ったミュージカルが始まることを、改めて感じることができました。小池先生の海外ミュージカルの新作は色々な驚きがあり、どのようなアレンジが飛び出すのか楽しみの一つでもありますので、しっかりと小池先生に付いて行きたいと思います。この作品のエネルギーをしっかりと持ち、初日に向けて、精一杯お稽古に励んで参りたいと思っております。」
マリー・アントワネットを愛してもらえるように
月組トップ娘役 愛希れいか
「日本初上演となるこの作品に挑戦できることを大変嬉しく思うと同時に、世界中で愛されるマリー・アントワネット役をさせていただけることを幸せに思っています。この作品の世界観の中で、彼女が目指した王妃を、そして一人の女性、母親として懸命に生きていく姿を大切にしながら、お客様にもっともっとマリー・アントワネットを愛してもらえるように演じたいです。愛され続ける作品の一つとなりますよう、心を込めて精一杯努めて参りたいと思います。」
熱い心、熱い気持ちで大作に挑む
月組 凪七瑠海
「今回、このような楽曲も素晴らしく斬新で、スケールが大きなこの作品に出演させていただけるということを、とても嬉しく思っております。私が演じる革命家の一人、カミーユ・デムーランは、史実上でも革命において、とても重要な任務を果たす人物でもありますので、彼の熱い心を、熱い気持ちを思い浮かべながら、大作に挑んでいきたいと思います。」
主人公側から憎まれる役を色濃く
月組 美弥るりか
「フランスで大人気のこの作品を初めて日本で上演するということで、その舞台に出演させていただけることをとても光栄に思っております。私の役は、軽薄な考えの持ち主で、自分の手を汚さずに、王位にのし上がろうとする悪意を持った人物でもありますので、龍さん演じるロナン側の人々から憎まれる貴族として、色濃く演じていきたいと思っています。」
革命に燃えている姿を情熱的に
月組 珠城りょう
「今回このような作品を、日本初上陸で、しかも月組で初演を務めさせていただくこと、本当に幸せに思っております。革命家のロベスピエールは、皆様もよくご存知の人物だと思いますが、独裁者と呼ばれる前、革命に燃えている全盛期を演じますので、心を込めて、彼が何を求めていたのかを情熱的に演じたいと思っております。」
大切に演じたいことは?
龍 真咲
今まで再演の多かった月組では、私自身の想像と先生の役のイメージの中から、元々形のないものを生み出すということは、新たな自分への挑戦だと思っております。私が演じるロナンは、宝塚歌劇のいわゆる主役のイメージを覆して、地に足を着けて、土を感じる、匂いのするような役だと思いますので、歴史では光が当たらないバックグラウンドで主張する1人の代表者として演じていきたいです。今の月組の状態とリンクするところはきっと多くあると思うので、まずは、しっかりとみんなを引っ張って行きたいと思います。
愛希 れいか
このような身分の高い役を演ずるのはほぼ初めてです。ただ、マリー・アントワネットという女性は、王妃でありながら親しみやすさと少女の心を持っているような可愛らしい部分が、私はすごく素敵だなと共感する部分の一つだと思いますので、そういった親しみやすい部分も出すことができたらと思います。
凪七 瑠海
どの資料を読んでも、カミーユ・デムーランは、目がギョロっとしていて、鷲鼻で、髪は多毛の上くせ毛の黒髪で、顔色は青白く、線が細いと書かれていたので、到底バスティーユ牢獄を落とす時に、先頭を切った人とはとても思えない印象を受けたのですが、中身はバイタリティー溢れる、とても熱い人だと感じたので、そこを大切に、人間臭さを大事に演じていきたいと思っております。
美弥 るりか
アントワネットの悪友と言われているぐらいなので、いろんな資料を拝見しても、軽薄で享楽的だと書かれていることがとても多い人物ですが、そういった部分を感じさせつつも、小池先生が書いてくださった台本には、とてもするどい部分がたくさんあり、自分の指示や考えによって、話が展開していく役割も担っていると思いますので、そういった頭がキレる部分も出していけたらと思います。
珠城 りょう
まず、この作品の中で、自分はどういう風に居たらいいのかを考えて演じたいです。ロベスピエールは、後に独裁者と言われてしまいますが、弁護士で議員という立場でもありますので、ただ理想と自分の意志を強く持っている青年だと思います。市民の言葉を声にしたいという強い思いで生きている人物ですので、そのあたりをもっともっと深めて作って参ります。
宝塚歌劇×フレンチミュージカルの新たな化学反応。宝塚歌劇の歴史に残るであろうこの瞬間を、お見逃しなく!!
演出家 小池修一郎が語る
『1789 -バスティーユの恋人たち-』のポイント
宝塚歌劇の舞台で上演することの意味、演出での工夫など、本作の魅力について、演出家 小池修一郎が語ります。
エンターテインメントの意義
——『1789 -バスティーユの恋人たち-』はどんな作品か?
エンターテインメントとして楽しい喜劇を上演することもあります。一方で、この作品もそうですが、過去に歴史的事実としてあった出来事を脚色し、ミュージカル化されているものもあります。そういった歴史的事実から、200年以上経っていますが、今、生きている私たちが必ずしも平和や幸せが全てに行き渡っているわけではありません。そんな困難な中でも、希望を失わないで生きていこうという勇気を与えてくれる作品を提供するというのも、ある意味エンターテインメントの使命だと思います。
ポップな現代音楽に乗せて描く、新感覚のミュージカル
——フランス革命を取り扱っている作品は多くありますが、この作品の特徴は?
実はフランスの方が創ったフランス革命のミュージカルなので、そこに思いもよらぬ視点があるのではと思っていたのですが、主人公のロナンが地方出身の農民で、その人が革命の中に身を投じて行くというドラマですので、その点が従来語られている英雄や革命で名を残した方たちとの違いではないかと思います。但し、使われているナンバーは、ポップスとして楽しく、大変カッコイイ曲が多いので、歴史的事実を踏まえて創られている作品にもかかわらず、楽曲になるとノリが良いのも特徴だと思います。
宝塚歌劇だからこそ、小池流の大胆なアレンジ
——オリジナル版と宝塚版の違いは?
宝塚版としては、龍演ずるロナンという人の生き方というものを追える、あるいは彼の生きた時代の周りの人、彼と会うことがなかった王族であるとか、周りの人々のそれぞれの生き方も、より鮮明に並行して追っていく形をとります。
——その中で、小池先生のあっと驚くようなアレンジは?
幕開きからすごく違います。オリジナル版も、実は2011年パリで上演され、それからフランスツアーがあり、また2013年にパリに戻って、ちょっと筋を変えているのですよ。私はとにかく、宝塚歌劇の龍真咲というトップスターを中心とした構成で創っておりますので、龍演じる主人公がどういう人だったのかといろいろ考えて、バスティーユ要塞を襲撃する時に、一番乗りで行動し、扇動した人と仮定しています。
——宝塚版オリジナル曲は?
実を申しますと、オリジナルの舞台で使われなかった曲がたくさんあり、また、今回用にご提供いただいた曲もあって、有難いことに自由に使わせていただける曲が多いのですが、キー音域の問題もあり男性の声の音域に作られた曲は、男役であってもなかなか大変なところもあります。場合によっては、オリジナルでは女性の役の人が歌っていたものが、宝塚歌劇では、男役が歌った方がバシッと決まるという曲もあります。ただいま取捨選択、最後の整理をしていますので、楽しみにしていただければと思います。
宝塚版としてのお目見えは2015年4月24日。どんな小池流アレンジが飛び出すのか、どうぞご期待ください。